農園のこだわり

農業を通して地域に小さな循環をつくりたい

身近で手に入るものを資材として利用する

 資材とは、圃場(畑)に直接投入する肥料や農作業の効率をあげるために使う道具のことを指します。例えば、一般的な農業は慣行農法(かんこうのうほう)と言われ様々な企業が研究開発した化学肥料や化学農薬を使用してできるだけ計画的に農産物を生産する方法をとっています。そのおかげで今たくさんの農産物が流通していて、年間を通して多種多様な食べ物をすぐに買うことができます。その一方で、農業分野から環境への負荷が生まれているのも事実です。私自身、学生時代には農業環境科学という視点から農業という産業から発生する環境負荷をいろいろな方法で数値化して可視化するという研究室に所属していました。最後の研究は有機農業でよく使われている家畜たい肥を製造する過程で温暖化に寄与するといわれている温室効果ガスがどのくらい発生しているのかを調べていました。畜産農家の方が排泄物を時間をかけてたい肥にして販売している現場に何度も足を運んだ経験から、有機農業をするなら必ず畜産農家のたい肥を使おうと決めていました。

農園では開園当初から身近なところで資材を探し、たまご農家さんから鶏糞を、牛農家さんから牛糞たい肥を、お米屋さんから米ぬかを、コメ農家さんからはもみ殻を購入または無償で提供してもらい、それらを土壌改良や作物を育てるための肥料として圃場に投入してきました。そのほか、”温床”(おんしょう)という春先の苗を育てるときに使う自然発酵熱を活用した落ち葉のベッドにはゴルフ場で集められた落ち葉をもらい、そこに米ぬかを混ぜ込み利用しています。

畑から遠くない場所で消費してもらいたい

便利な世の中になりいつでもどこでもなんでも手に入れられる世の中ですが、できる限り小さな循環で長期間継続して農業ができるように近くのものを最大限活用することに努めています。なので、生産した野菜はできるだけ近くで消費していただきたいと思い近隣での販売を主に行っています。もちろん営農するうえではその都度適した判断を必要とするので時には遠方から入手することもありますが、根底には最初に記した通り「農業を通して地域に小さな循環をつくりたい」という思いがあります。

無いときには無い

資材を駆使することで季節を早どりしたり収穫できる期間を延ばしたりする便利なものがたくさんありますが、季節感を大切にしたいのであまりたくさんのビニール資材や電気資材は使わないようにしています。毎年1月~2月にかけてどんな野菜をどのくらいつくるか年間計画を立てるのですが、その時点で無理のないような品目・品種・栽培量を決めていきます。お客さまに聞かれた際にも「無いときには無いんです」とはっきりと言うようにしています。もちろんその理由も説明します。”〇度になると、花が咲かなくなって実がつかないんです”など植物の特徴を伝えたり、”地域がら寒すぎて凍ってしまうんです”など。農園に足を運んでもらうことで理解を得やすくする工夫も大切だと考えています。忙しくない時期には農園の見学も大歓迎です。見ていただくと、どういう理由があって野菜がよく育つのか or 育たないのかをこちらも伝えやすくなり、結果的に生産者と消費者の理解が互いに深まると実感しています。